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「animate Times Presents スロウスタート リレーインタビュー」
Vol.11 プロデューサー・橋本渉インタビュー

『スロウスタート』のアニメ化は、どのような経緯ではじまったのでしょうか。
はじめは「橋本(裕之)監督と作品を作りたい」という想いからスタートしました。そこから橋本監督と一緒に、どの原作をアニメ化してみたいかを、読書会のような形で、様々なマンガやライトノベルを読みながら話し合いを重ねていきまして。最終的にこの原作なら絶対面白いアニメになると意見が一致したのが、篤見(唯子)先生の『スロウスタート』でした。
どういった点に魅力を感じられたのでしょうか。
僕がまず惹かれたのは、言葉の掛け合いの面白さですね。ちょっと毒のあるところも含めて、女の子同士の会話に篤見先生ならではのエッジが効いていて、そこが魅力的だなと。
また絵柄に関しても、かわいらしいだけでなくフェティッシュな部分も活きていると感じました。コマの枠線にキャラの胸が乗っていたり、スカートのギリギリ感だったり、表紙イラストの裸足だったり……。しかも女性作家さんならではなのか、それが下品に見えてしまうこともなく、むしろアニメへと落とし込むことでより映えるのではないかと。
実際にアニメのキャラクターデザインを最初に見た際はどう思われました?
篤見先生のイラストの魅力と、アニメとしての見映えと動かしやすさを両立させる、安野(将人)さんのデザイン精度の高さに驚かされました。しかもそれだけでなく、わずか1週間ほどの間に、クラスメート全員分の設定画まで次々とあげてくださったんです。それを見たときは、スピードと技術力はもちろんのこと、安野さんの作品へ込める熱量にありがたさとうれしさを感じました。
完成映像ではキャラクターの動きの細やかさも印象的ですね。
かなり早い段階から「これはすごいものができるな」と想像がつきました。例えば第1話のアバンや、冠が廊下を歩く花名を追い越し栄依子に抱きつくシーンなど、原画をつないだ途中段階の映像を観ただけでも、想像を遥かに超えて動いていることがわかりましたから。基となる橋本監督の絵コンテの力に、安野さんをはじめアニメーターのみなさんの熱量が加わることで、ここまで新たな魅力がプラスされるんだという驚きがありました。
ほか制作現場で印象的だったエピソードを教えてください。
篤見先生と橋本監督とシリーズ構成の井上(美緒)さんの間のやり取りは印象的でしたね。3人の仲がとても良くて、シナリオ会議でも終始盛り上がっていました。
また先生は、珍しいストラップやグッズを集めるのがお好きなそうで、監督へもカニのハサミがついたボールペンをプレゼントされていました(笑)。シナリオ打ち合わせ中も、「明太なめたけオムレツサンド」や「栄依子のヘアピン」について、先生からユニークなレクチャーを受けることができて、まるで先生の頭のなかを覗いてるようで楽しかったです。
キャストさんはいかがでしたか?
メインキャストの若手4人は、こちらの想像以上にがんばってくださいました。特にOP主題歌「ne! ne! ne!」のミュージックビデオの撮影をきっかけに、4人の絆が外から見てもはっきりとわかるくらい深まって。まさに同じ時間を共有し、同じ目標に向かっていくことでお互いの力を引き出し合える、そんな理想的な関係性が築けているのではないかとうれしく思っています。
これまで放送済みのエピソードのなかで、橋本プロデューサーが個人的にお気に入りのシーンをご紹介いただけるでしょうか。
たくさんあるのですが、個人的にグッと来たのは、第3話で花名が両親と再会するシーンですね。3人の何気ない会話から、娘を想う親の気遣いと、家族の絆の深さが伝わってきました。その終盤でも、花名が両親からの誕生祝いのカードとスノードームを見つけるシーンがありますが、セリフではなく手紙とプレゼントで親の気持ち推し量ることができて。どちらもキャラクターの深みが出ている、『スロウスタート』らしい素敵なシーンだと思います。
TV放送はいよいよクライマックスに差しかかっています。ズバリ見どころは?
花名の成長を感じ取っていただけるとうれしく思います。『スロウスタート』の企画時に念頭にあったことの一つに、「これまでの日常系アニメとどう差異化するか」という点がありました。そのときキーワードとしたのが「ゆっくりとした成長」です。1クールという枠のなかで、花名が半歩だけ、ゆっくりと前に進む姿を見せられればいいなと。そこは橋本監督と井上さんが一生懸命考えてくださったポイントでもあるので、注目していただけるとうれしいです。
3月28日にはBlu-ray&DVDの第1巻が発売されます。こちらの注目ポイントも教えてください。
ビデオパッケージの特典には、僕がやりたいと思うことを全部詰め込みました(笑)。例えば第1巻では、作中に登場した花名とたまての架空のユニット「かなえたまえ」のキャラクターソングを収録しています。作曲はキャラクターソングアルバムから引き続き、ROUND TABLEの北川(勝利)さんにお願いしました。アニメ音楽ファンにもたまらない内容だと思います。
またそれと連動して、2人の物語を描いたオーディオドラマと、安野さんが2人を描き下ろしたデジジャケットが付きます。キャラクター同士の掛け合いや関係性の魅力を、何とかビデオパッケージでも伝えられるように努めました。
またブックレットには各巻、1万字のスタッフインタビューを掲載しています。
すごいボリュームですね。
スタッフさんの力あってのアニメなので、視聴者のみなさんに制作現場での熱量をもっと知ってもらいたいと思ったんです。また何より、橋本監督がものすごくお客さん想いで、例えば作品のファンイベントなどでも、積極的にお客さんと触れ合われる、すごく距離感の近い方なんですね。そういう意味で、キャラクターだけではなく、スタッフも身近に感じてもらえる作品にできたらいいなと思っています。

インタビューの続きは、アニメイトタイムズにて!