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「animate Times Presents スロウスタート リレーインタビュー」
Vol.5 原作者・篤見唯子先生インタビュー

現在放送中のアニメをご覧になっていかがですか?
みんなの動いている姿はやっぱり可愛いですね。花名が電話をしているときに、足の指をモジモジと動かす仕草がとくに可愛かったです。メインの4人はもちろん、クラスメイトも丁寧に描かれていて、細部の作り込みがすごいなと驚きました。一番インパクトがあったのは志温ちゃんの胸なんですけど(笑)、私も胸は大きく描いたつもりでしたが、アニメでは予想以上に盛大に動いているなあと。
キャストのお芝居は?
みなさんそれぞれの役柄をすでにつかんでいますよね。私自身もマンガを描いていると、キャストさんの声でセリフが聞こえるようになってびっくりしたんです。オーディションのテープをはじめて聴いたときは「どの声も花名っぽいなぁ……」なんて思っていたのですが、久々に聴き直したら近藤(玲奈)さんの声しか花名に聞こえなくなっていました。私のなかでも近藤さんが花名になっているんだなと実感しましたね。
続いて原作についてお伺いします。設定が独特だと思うのですが、どういったところから発想されたのでしょうか?
「きらら」の編集さんから「テーマや設定をきっちり作ってほしい」と言われて、まずはメインの女の子に秘密がある状態から物語をはじめようと考えました。けれども具体的なアイディアがなかなか思い浮かばなくて、何もないアパートに移住してきた花名がいろいろなものを集めていくというストーリーや、実は花名が宇宙人だったなんていう設定などを考えたのですが、さすがにこれは行き詰まるなと。そんななかで、あるとき不意に“中学浪人”という設定が思いついたんです。
花名は極度に内向的な性格も特徴的です。
当初はもっと調子に乗りやすい子で、わりと毒を出していくつもりでした。でも編集さんが花名の可愛いらしいところを気に入ってくださって、「やっぱり可愛いほうがいいのかな」と思っていたら、どんどんエスカレートしていってあそこまで弱々しくなってしまいました(笑)。そのため当初あったお調子者という要素は、花名の代わりに万年さんが背負うことになって。
万年さんも花名と通じる内向キャラですよね。
はい。実は花名と万年さんは二人で一人みたいなところがあって、一つの設定が分裂して生まれたキャラクターなんですよ。浪人という共通点があるのも、その名残ですね。万年さんはいまの少しダメな性格がとても気に入っています。彼女が立ち直って真人間になってしまうと、そのまま大学へ行って物語にも関わらなくなってしまうので、この先どうするのかが悩みどころですね。
たまてはいかがですか?
彼女は私の持ちキャラのような子なんです。愛着のあるキャラクターで、ストーリーのなかでもすごく動かしやすくて。私としても馴染みのある子がいれば連載も心強いなと思って登場させました。花名は学校に知り合いがいなくて心細い気分を味わっていましたが、私はそうはなりたくないなと(笑)。
栄依子は大人っぽい魅力があるキャラクターで、小柄だけど毒舌な冠とコンビになっています。
栄依子は冠と対で出そうと考えていて、私の趣味をそのまま出してしまいました。イチャイチャ担当が欲しかったんです。
ただ栄依子は榎並先生に惹かれている部分もありますよね。
当初はそんな展開になるとまったく想定していなかったんですよ。キャラクターが自然に動いてしまうことが多くて、榎並先生も本来であればストーリーに関わらせるつもりはありませんでした。『スロウスタート』ではメインの子たちの名字に数字の単位を付けていて、花名なら「一之瀬」、栄依子なら「十倉」という風になっています。だから、先生にそれがないのは脇役のつもりだったからなんです……が、気付いたら栄依子が近付いてきてしまって(笑)。
志温はいかがですか?
志温は一番マンガっぽいキャラクターかもしれませんね。第1話で高校の制服を着せたのは、単に私が着せたかっただけということもあるのですが(笑)、大学を卒業してもそういったことが平気な、ほんわかした人だと表現できればいいかなと思ったからです。
原作ファンの間では、コマの枠線に胸が乗っている描写が話題になりましたね。
4コママンガだと1ページ8コマの状態が続くので、どうしても単調になってしまうんです。そこからなるべくはみ出していきたいという意気込みが出てしまったのかもしれませんね。
キャラクターのデザイン面でこだわった箇所はどこでしょうか?
シルエットだけで誰なのかわかるようにしようと思っていて、髪型はとくに気を付けました。花名の髪を結んでいる部分はハートのつもりです……が、最近はなんだか源氏パイにしか思えなくなってきています(笑)。たまてのリボンを片方だけにしたのは、集合絵で邪魔にならないようにするためですね。ツインテールも最初は髪の毛のつもりだったのですが、いまではリボンのようなつもりで描いてしまってます。冠もリボンを触覚のように立たせようと最初から決めていました。
栄依子はデザインが一番変化したキャラクターです。髪がだんだん伸びていくキャラを一度描いてみたいと思っていたのですが、手癖で描いていたら自然に髪が長くなってきて、伸びた感じを出すことができました。無意識だったのですが結果的にはとても良かったです。
クラスメイトたちに関しても設定まで起こされていたりと、学校内の雰囲気も魅力ですが、女子高の空気感を描くうえでのポイントはどこでしょうか?
私自身は共学出身なので、どうしても想像の女子高になっているとは思います。実際の女子高は意外に想像とは違うという話も聞きますし(笑)。でもそういった面は見せないようにしていますね。
ちなみに篤見先生はどのような高校時代を過ごされました?
私は授業が終わったらすぐ家に帰りたいタイプだったのですが、先生もそんな感じの人で、放課後のチャイムが鳴って自転車に乗ってこぎ出した私の横を、先生の車がバーッと走り去っていって、「ああ、先生も早く帰りたいんだな」と(笑)。こんな適当な先生で大丈夫なのかと少し心配にもなったのですが……。
少し榎並先生と通じる部分があるような。
わりと似ている部分があるかもしれませんね(笑)。もしかしたら気付かないうちに実体験が反映されているのかもしれません。

インタビューの続きは、アニメイトタイムズにて!