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「animate Times Presents スロウスタート リレーインタビュー」
Vol.6 橋本裕之監督インタビュー

まずは企画がスタートした経緯について教えてください。
アニプレックスのプロデューサーから、「橋本さんが気に入った原作をアニメ化したい」と声をかけてもらったことがきっかけです。それでまずは、マンガやライトノベルを大量に送ってもらって読むところからはじめました。そのなかで『スロウスタート』がすごく面白かったんですよ。
どういったところに魅力を感じられたのでしょうか?
絵が抜群に可愛いのと同時に、少し暗い部分を持ち合わせているところに惹かれました。主人公が中学浪人をしていたなんて設定は、普通の「日常系」作品ではないですよね。基本は明るい世界観でありつつも、キャラクターの意外な面が少しずつ見えるようになっている。そんなさまざまな要素が入り交じった感覚に魅了されて、この原作をアニメ化したいと企画がスタートしました。
「まんがタイムきらら」に連載中の作品ですが、原作者の篤見先生とはどのようなご相談をされたのでしょう?
まだ連載中の作品ですが、アニメは1クールという時間のなかでまとめる必要があるため、今後の原作の流れについて伺いました。またキャラクターのプロフィールもいただいたのですが、一人一人に非常に細かい設定があったんですよ。あまりに細かすぎて、作品に反映できるのか心配になるほどに(笑)。
詳細な設定があることで、作品づくりにおいて違ってくる点はあるのでしょうか?
たとえば犬が嫌いなキャラクターは普通、犬の話はしませんよね。なのでそういう情報を知れば知るほど、細部の描写をうまく積み重ねることができるようになって、会話がどんどん自然になっていく。映像化する僕たちにとっては、与えられた情報が多ければ多いほどやりやすくなるんです。
アニメ化にあたって、メインスタッフはどのように決まっていったのでしょう?
シリーズ構成は僕から、以前ご一緒したことがある井上(美緒)さんにお願いしました。キャラクターデザインの安野(将人)さんは、A-1 Picturesの制作プロデューサーからの紹介ですね。安野さんは打診してすぐ、まだ参加するかも決まっていない段階でデザインのラフを描いてきてくれたんですよ。すごいやる気だなと思いましたし、そのうえきちんと原作のポイントを押さえた絵になっていて、そのまま決定稿にしてもいいくらいの仕上がりでした。
アニメではキャラクターの動きが非常に魅力的に描かれていますが、それは安野さんの熱意も大きく関わっているのでしょうか。
そこは本当に大きいですね。安野さんをはじめアニメーターがみなさん、愛情を持って作品に接してくれているんです。作画スタッフはみな「このキャラはこういう風に動かしたい」という明確なビジョンを持っています。その熱意は、できるだけ画面に反映させたい。第1話のアバンは安野さんが原画も手がけていますが、ものすごく魅力的に動かしてくれました。
橋本監督ご自身は、どのようなコンセプトを持ってアニメ化に臨まれましたか?
できるだけ全話を観てもらえるような作品にすることを意識しました。やはり作画がいくら頑張っても、観てもらえないと報われないですからね。だから監督には、第1話、第2話、第3話と続けて観たいと思える作品をつくる責任があると思っています。
視聴を継続してもらうためには、どのようなことが大事になるのでしょうか?
まず「中学浪人」という部分のマイナスのイメージをできるかぎり与えないように心懸けました。第1話で花名が中学浪人をしていたことがわかるシーンも、原作より少し優しいタッチで描いています。アニメとマンガの大きな違いに、声と音楽があります。それらが入ることで、受け手に与えるダメージもマンガよりも大きくなる。なので花名が中学浪人しているということは、彼女が明るい表情になるCパートのときにナレーションで伝えて、ショックを和らげるようにしました。
背景美術も温かみが前面に出ていると感じます。
こちらも重い感じを出さないようにするため、可愛いカラーリングを目指しましたね。学校はパステルカラーを取り入れていて壁もピンク色なので、高校ではなく幼稚園に見えてしまうぐらいのイメージです。もし茶色の廊下に花名がポツンと立っている姿を描いてしまうと、どこか悲しく見えてしまう。そんなマイナスの要素をなくすように努めました。
キャスティングはどのような方針で決められたのでしょうか?
メインキャストの4人は若手でいこうと決めていました。自分にとって「きらら」作品は、メインキャストの絆がどれだけ深いかが大切だと思っていて。アニメだけでなくリアルでのシンクロも大事にしていて、若手の声優さんならイベントでも全員がそろいやすい。ファンの方のなかにはキャストの掛け合いを楽しみにしている方もいらっしゃいます。アニメだけでは得られない何かを、キャストたちを通じて体験してもらえればうれしいですね。
アフレコ現場はいかがでした?
自分はキャストの側からキャラクターを少しだけ壊してほしいと思っていて。「この子ってこんな声を出すことがあるんだ」と意外に思える芝居が出てくれば、キャラの新たな一面が生まれます。
マンガからアニメになることで、声優さんによってキャラクターに息が吹き込まれる。そして彼女たちの声に篤見先生が影響されて、キャラの可能性がさらに広がっていく。そういう風に良い意味で循環していけば、『スロウスタート』という作品自体がより楽しくなるだろうと思って臨んでいます。
ということはアドリブも多いのでしょうか?
はい、チャンスがあれば入れたいなと思っていますし、キャストさんもアドリブを狙っているところがありますね(笑)。結局のところ、アフレコは音響監督の(明田川)仁さんが大笑いすれば勝ちですから(笑)、アドリブが面白くて、世界観にきちんと合っていれば、そのまま採用することも多いです。作画と同じように、みなさんの熱意を大切にしていますね。
シリーズは間もなく後半戦です。これからの見所はどこでしょうか?
後半はどんどんぶっ飛んできますよ。ブレーキが壊れているんじゃないかなと心配になるぐらいです(笑)。なかでもの栄依子と榎並のエピソードは要注目ですね。この2人の関係性は篤見先生の隠すことができない何かが溢れ出ていますから(笑)。 また水着回もあります。原作では水着を買うだけで海にもプールにも行かないという『スロウスタート』らしい展開だったのですが、アニメでは泳ぎに行くことにしました。マンガで描かれていないところを補完したり、アニメで作品を知った人に「原作はこんな感じなんだ」と思ってもらったりと、相互に繋がっている感じを出したかったんです。

インタビューの続きは、アニメイトタイムズにて!