Special
原作 篤見唯子 × 監督 橋本裕之 × シリーズ構成 井上美緒
スペシャル座談会
『まんがタイムきらら』10月号に掲載されたスタッフスペシャル座談会の
ロングバージョンを公式ホームページ限定で公開!
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- 今日はTVアニメ『スロウスタート』のお話を順番にうかがっていきたいのですが。
- どの辺からお話するといいですかね。
- 企画の経緯とかじゃないですか?
- それだと、アニプレックスさんに誘われたところからですね。前の作品をやっていたときに「次は(監督として)一緒にやりましょう!」って。それでどの作品がいいかなと、一緒にすごい数の作品を読んでいって。
- 読書会みたいなのをされてたんですよね。
- そうそう。それでこの『スロウスタート』がいいなと。
- おー。
- うれしいです! ありがとうございます!
- 決め手になったのはどこだったんですか?
- 『まんがタイムきらら』(以下、『きらら』)作品ってかわいくて優しい世界みたいなイメージがあるじゃないですか。
- はい。
- でも『スロウスタート』にはかわいい以外にも魅力があって。絵もかわいくて、キャラも面白いから、読みはじめたらすぐに読めちゃって。すごくいいなと。
- 私もそのギャップがおもしろかったですねー。
- 井上さんはどの段階から参加されたんですか?
- アニメ化が正式に決まってからでしたよね。
- うん、僕から声をかけたんです。というのも、井上さんは女の子キャラクターの感情の機微を描くのがうまいんですよ。
- えー(笑)。
- わかりますわかります。
- たとえばロボットのかっこよさがわからない人に「ロボットをかっこよく描いてください!」と言っても、「どうしよう」となってしまいますよね?
- そうですね。
- それと同じで、『スロウスタート』は単にかわいい、楽しいというだけじゃなくて、“感情のつながり”を大事にしてる作品ですから、泣いてる、笑ってるというのを描くときも、そのシチュエーションごとに違った泣き方や笑い方を持ってこられる方でなきゃいけないと思って。それで井上さんだと。
- すごい褒められてしまった(笑)。
- 難しいバランスの作品ですよね。篤見先生はどんな風に作品を発想されたんですか?
- 最初『きらら』さんからお誘いをいただいたときは、「ゆる~くてかわいいお話をやりたいな」と思ってたんですけど、編集さんは「部活で大会に出るみたいな、何かを目指す話にしましょう」って。それでストーリー要素を入れる方向で考えていって。
- それでシリアスな要素が出てきた?
- はい。でも結局、部活とか目指すべき目標とかはないままですけど(笑)。
- (笑)。最初にアニメ化のお話を聞いたときはやっぱりうれしかったですか?
- 最初にいきなり「お話があります」と編集さんに呼ばれたときは、「あー、これは打ち切られちゃうのかな……」と(笑)。
- あはははは(笑)。
- それで、「もっと先までプロットができてるんだけどな~」と恐る恐る行ってみたら、まさかのアニメ化のお話で……びっくりでした(笑)。
- 「先までプロットができてる」というのはどの辺まで?
- あの頃はどこまで考えてただろう。
- 私たちの最初の顔合わせのときにはもう、すごく先の展開まで決まってましたよ。
- 最初から結構先まで考えてあったんですよね。
- まだ原作に出ていないようなキャラクターの設定まできちんと作ってあって。
- 家族構成とか両親の名前とか職業とかまで。
- 決めてましたね。
- あの設定のおかげで「両親がこういう人だったら子どもはこんな感じに育つかもな~」っていうイメージがすごく見えてきて。
- 最初から作品に関する具体的な打ち合わせまでされたんですか?
- いえ、最初はいま話したくらいですかね。すごく落ち着いたカフェだったので、ざっくばらんに話すというよりは、はじめての集団お見合いみたいな感じで(笑)。
- あははは(笑)。
- 具体的な話はそのあとでしたね。
- まずは篤見さんにいろいろ質問をお送りしていて。
- 質問というのは?
- 「このキャラは何歳ですか」「何が好きですか」みたいなのですね。山ほどお送りしたので、困らせてしまったかもしれません(笑)。
- そんなことはないですよ! 「そう言えばこれ決めてなかったな」と急いで考えましたのもありましたけど(笑)。
- (笑)。それでまずは私がシナリオの初稿を書いてみて、それを元にみんなで毎週打ち合わせを、という流れですね。篤見さんにも毎週来ていただいて。
- シナリオの打ち合わせはいかがでした?
- 井上さんは執筆スピードが早いので助かりましたね。打ち合わせの何日か前にはもう原稿が上がってくるので、考える時間がたくさん取れるんですよ。
- また褒められてしまった(笑)。私は篤見さんのチェックが丁寧なのがありがたかったですね。
- えー(笑)。
- あと「ここのセリフをこう変えるのはどうでしょう」みたいに、指摘が具体的なんですよね。マンガをアニメにするときって、どうしてもオリジナルのセリフが出てきてしまうものじゃないですか。
- そうなんですよねー。
- 同じ内容の会話でも、アニメでは物語の流れにあわせて話す場所を変更しないといけなかったりして、そうなるとその場所にふさわしいセリフに調整しないといけなかったりする。
- うんうん。
- そういうとき、「ここの変更したセリフ、なんとなくイメージと違います」と言われるより、「こう変えてほしいです」と言われたほうが、原作のイメージにどんどん近づいていくことができるからいいんですよね。
- セリフというか、語感にはこだわっているので、どうしてもうるさくなってしまって……すいません。
- とんでもない!
- 篤見さんのチェックのおかげで、原作ファンにも違和感なく見ていただけるシナリオにできたんじゃないかと思いますね。
- また今回、キャラクターの設定画も公開されましたが、こだわりのポイントはどこですか?
- キャラクターデザインの安野(将人)さんが、僕が何か言う前にラフ案を作ってくれてたんですけど、その時点でもうすごくかわいくて(笑)。なので基本路線はそのまま。僕からは少し頭身を調整してもらったくらいですよ。
- 最初のときはいまよりももう少し頭身が低かったですよね。
- 篤見さんの絵柄とアニメで動かしやすい絵柄のバランスを取ったかたちですね。
- 篤見先生は見てみていかがでしたか?
- 「かわいい!」としか言いようがないです(笑)。
- よかった(笑)。そういえば、学校とかアパートとか街並みといったアニメの背景は、オリジナルで作らせてもらったんですけど、そこは篤見さんから見てどうでした?
- そこも全然ばっちりでした(笑)。ロケーションは、私もあまり決め込まずにぼんやりしてた部分が多かったので「こんな風になるんだー」と。
- アニメ版の背景のコンセプトは?
- 原作の舞台のモデルが観光地のようなイメージの土地だったので、商店街なんかにもお土産屋が混じっているような、ちょっとだけ変わった街並みにして。
- 半分外国みたいなイメージですよね。
- そうですね。アニメを見ながら「観光地に住んでいる人はこういう感覚なのかな」というのを味わってもらえたらうれしいですね。
- そちらの設定の公開も楽しみです! それでは最後に、アニメに関して、読者へのメッセージをお願いします。
- 私が見てほしいのは、やっぱりキャラクターのやり取りですね。かわいくもあり、生っぽくもあり、ちょっとズレてもいる会話の空気感を楽しんでもらえるとうれしいです。
- 私はキャラクターのかわいさですね。さっき、連載をはじめるときに編集さんから「ストーリー要素を入れてほしい」という話をしたじゃないですか。
- はい。
- そのときに「ストーリーものにすると、4コマでオチつきませんよ?」って聞いたら、「オチは“かわいい”です」と返されて(笑)。
- あー、わかります(笑)。
- 「そうなのか!」と(笑)。それがすごく印象に残ってて、そこは気をつけて描いてきたんですね。
- そこは重要ですよね。単にかわいいだけの作品ではないですけど、だんだんとあったかい気持ちになれる作品だと思っています。だから、まずは一回見てみてほしい。それと僕からはやっぱり映像ですね。動くキャラクターを見てほしいです。
- 私もすごく楽しみです。とくに志温ちゃんのおっぱいがどう映像になるのか(笑)。
- あーっ、そこは私も気になります(笑)。
- 原作だと、巨乳がマンガの枠線に乗っかってたりしますからね(笑)。
- すごいプレッシャーをかけられた(笑)。あれをいったいアニメでどう表現したものか……そこも注目ポイントということで(笑)。